満たされる
- 4月20日
- 読了時間: 2分
【 感覚過敏 】
わたしの鼻が
花の香りをとらえる
甘ったるい
ツンと癖のある
ほろ苦い香り
木蓮の花で
体は
春が来たことを知る

頬にはあたたかい風
痺れた手に目を落とし
そっと開く
すこし水気を帯びて
風がすぐに
それを癒す
足の下の若葉が
ふみしめる重力を
やわらかく支える
まるで皆で
わたしを応援するように

あんなに
喘いでいた頃を
懐かしむ
感覚に意識をむけて
今を感じきるのに
春は鼻がいそがしい
地球が今だと言いながら
太陽に向かって
手を伸ばすかのように

わたしは
いわゆる
感覚過敏で
鼻がききすぎて
人混みへ行くと
途端に情報過多になる
柔軟剤
化粧品
香水
整髪料
体臭
薬
病
見えない何か
あげたらキリないが
鼻がこれらを
勝手に探しに行く
よせばいいのに
感覚にスイッチは無い
そして
力尽きてしまう

誰かに
信じてもらうことを
諦めてもいい
そんなことより
自分が
自分を信じるんだ
だれよりも
まっさきに
この感覚を
信頼する
それだけでいい
香りをとらえる鼻を
色彩を感じる目を
風を懐かしむ肌を
それらに意識をむけて
自分を慈しむ

誰かの目を気にして
自分を振り返るのは
後回しにして
今は
自分という
存在に
耳を傾ける
春は鼻がいそがしい
大地が
芽吹く
あんなに
喘いでいた自分が
懐かしい
あんなに凍えていた
冬は終わる

鎧を解いて
鼻をきかせて
やわらかい自分で
若葉の上を
支えられながら
素足であるく
今この瞬間は
満たされていいと
体に許す
心配することも
憂うことも
人目を知ることも
ぜんぶ後にして


