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消えたかったわたし

  • 3月28日
  • 読了時間: 3分

更新日:4月6日


【 わたしの記憶 中学生 】


お気に入りの

赤いシャツに

袖を通した



目立つ服



それでも

迷いはない



学校へは

電話した



体調不良です

そう言った




お大事に


そう電話の向こうから

聞こえ終わる前に


受話器を置いた





気持ちが沈んで

学校へ行きたくない


それでも


ズル休み


そんな風に


言われてしまうのかな




気持ちが沈んで

行きたくないんです


そんな風に


内側まで

さらけ出さなきゃ


休ませては

くれないのかな





家にもいたくない




中学生のわたしは


お気に入りの

赤い服を来て


学校を休んで




赤い自転車へ

またがって



知ってる道を



ただ

ひたすら

走った





家が嫌い



わたしは

高所恐怖症


それでも家は

マンションの

8階にあって


おまけに

玄関前の


フェンスが

頼りなく

細く

低い



今にも体が

マンションの外に

吸い込まれそうで


いつかふと

自分が落ちて

しまいそうだった




階下の人が

マイクを使って


ときどき

騒いでる


変わった人


エレベーターで

見かけるときは

とても静かな男の人




頭痛が続く

気持ちが

滅入っていた




クサクサした

気持ち


怒りが沸いてくる


何に?


自分に?


世間に?


親に?


学校に?


下の住人に?



理由もわからず

感情も知らず


ただただ

自転車を

走らせた





ふと


鼻が

匂いを

捉える


家畜の匂い


自転車を停めて

匂いをたどって


牛舎へ

着いた



トタンの隙間から

黒と白の

体が見えた



乳牛



首には

太い縄


大きな

身体と

充血した目


閉じ込められた


身を

捩ることも


後ろを

振り返ることも

できず


人のために

囲われた命




わが子のために


あふれ出る

乳を


与えることも

出来ずに



隙間から見える

その命の


牛の

息づかいを

感じたくて



しばらくじっと

わたしは

意識をかたむけた


長い間


わたしは

そうやって

自分を


命を整えていた





担任が

わたしの傷をみて

言っていた言葉を


思い出していた



傷跡が

残ってしまうなぁ




先生

わたしは


私の傷は

まだふさがらない


今もまだ

終わったことじゃない


まだわたしは

消えたいと思ってる




消えたい


その

気持ちが

消えない


どんなことを

言っても


何を口にしても

心が通わない



わたしは

わたしを演じてる


わたしは

わたしに

絶望してる


いくら口を

開いても

心を語れない




そんなことを

思いながら


ため息をついた


立ち上がって

自転車にまたがり

走り出す






気がつくと


沈んだ気持ちが

落ち着いて


さっきの

牛舎の匂いを

思い出していた


クサクサした

あの不快も

紛れた


ただ

うやむやに

なっただけだとしても


心は落ち着いていた



階下の変わり者が

マイクで騒ぐ



あの大嫌いな家に

わたしは

帰って行った





不登校

そんな言葉が

当たり前になり


HSC

感受性が強い


そんな棲み分けも

聞くようになりました



子ども達が

自分自身の

感受性を疑ってしまい


自分自身のことを

責めることが

なくなるように


わたしは

自分の過去を


こうして

少しづつ

綴っていきたい


そんな風に思います







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© saori wakabayashi

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